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こんにちは! この春から航空宇宙工学科3年の野口です。 こちらの記事では、航空宇宙工学科について紹介したいと思います。
航空宇宙工学科では、その名前からわかるように、航空機やエンジン、人工衛星について学びます。“空を飛ぶ”航空機や“宇宙を行き来する”人工衛星を学ぶ分野というと、そのための特別な学問から成り立っていると思われるかもしれません。しかし、航空宇宙工学というのは専門の学問のみならず様々な工学の学問分野を統合してはじめて成り立ちます。そのため、航空宇宙工学科ではまず基礎から幅広く学び、その後さらに専門的なことを学ぶ、というカリキュラムになっています。
それでは、具体的に時間割を見ていきましょう。
昨年度の2年の秋学期の時間割はこのようになっていました。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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1 | 航空宇宙情報 システム学第一 |
航空宇宙学 製図第一 |
高速内燃機関 | ||
2 | 数学及力学演習G | 航空機力学第一 | 計測通論A | 基礎材料力学 | |
3 | 数学及力学演習G | 航空宇宙 推進学第一 |
電気工学 通論第一 |
宇宙工学入門(A1) /基礎材料力学(A2) |
|
4 | 数学1B | 宇宙工学入門(A1) | |||
5 | 空気力学第一 |
名前だけからではどんな授業か想像しにくい科目について補足します。
航空宇宙情報システム学第一:情報の基礎を学びます。例えば、航空機の交通管理や人工衛星の自律化には、機械学習が役に立ちます。この機械学習を学ぶ上で情報の基礎は欠かせません。
航空宇宙推進学第一:工業熱力学の基礎を学びます。エンジンなど熱機関の作動原理の一つです。
航空宇宙学製図第一:機械製図や機械設計の基礎を学び実際に製図します。エンジンや航空機は様々な部品から成り立っており、最終的にエンジンや航空機の設計ができるようになるには、構成部品について知っておく必要があります。
航空宇宙学製図第一は計5回ほどの授業で毎回製図の課題が出され、次の授業日までに完成させて提出します。 個人的に面白かったのは航空機力学第一で、航空機の運動を考える際に必要になる知識など航空機の基礎を学びます。実際に存在する旅客機の三面図(注1)や諸元(注2)からその揚力係数(注3)を調べるレポートは楽しくやりがいがあり、航空宇宙工学科に来たという実感が湧きます! この2年の秋学期の時間割から、まず基礎的なことを学ぶということがわかっていただけたかと思います。
次に今年度の3年の夏学期の時間割を紹介します。
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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1 | 航空宇宙 自動制御第一 |
航空宇宙情報 システム学第二 |
空気力学第二A(S1) /空気力学第二B(S2) |
基礎振動論 | |
2 | ジェット エンジン |
航空機力学第二 | 数学2B | 弾性力学第一 | |
3 | 航空宇宙材料 | 宇宙工学演習 | 数学2B | 航空宇宙推進学 第二 |
航空宇宙学 基礎設計 |
4 | 航空機構造 力学第一 |
宇宙工学演習 | 数学2B(~15:00) /航空宇宙学製図第二 |
航空宇宙学 製図第二 |
航空宇宙学 基礎設計 |
5 | 空気力学第一 | 航空宇宙学 製図第二 |
航空宇宙学 製図第二 |
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6 | 航空宇宙学倫理 |
航空宇宙情報システム学第二:プログラミングの基礎を学びます。人工衛星のシステムの構築をする際などに使います。
航空宇宙推進学第二:伝熱工学について学びます。例えば、人工衛星を宇宙空間で使用する際に、向かった先の熱環境が原因で、人工衛星が壊れてしまうなどということがあっては困ります。そこで伝熱工学の知識を生かして適切な人工衛星の熱設計をします。
航空宇宙学基礎設計:機械設計の基礎を学びます。航空宇宙学製図第一に比べ、より実践的です。工場など実際の現場でどのように機械が設計されたり作られたりしているのかわかります。
航空宇宙学製図第二:航空宇宙学基礎設計で出される課題(機械設計)を行います。
航空宇宙学基礎設計は隔週で授業があり、その度に課題が出されます。航空宇宙学製図第二はその課題を行う時間で授業はありません。課題は、お題として提示された機械を設計し、その設計書と図面を提出するというもので、強度計算やCAD上での設計が個人的に大変だなと感じていますが、何時間もかけてやっと完成させたときの喜びはなんともいえません!
![航空宇宙学基礎設計で作成したフランジ形固定軸継手の図面]/assets/images/2020/06/intro_aerospace.jpg()
このように、3年の夏学期までは幅広く学べるようカリキュラムが組まれていることがわかると思います。
私が詳しく知っているのはここまでなのですが、この後3年の秋学期からは、空気力学系科目や制御・システム系科目、航空機や宇宙機の構造・材料について専門的に学んでいくシステムコースと、推進系科目やエンジンの構造・材料について専門的に学んでいく推進コースに分かれます。そして、4年の初めで研究室に配属され、卒業研究と卒業設計をして卒業、となるようです。
研究室については、航空機や人工衛星、エンジンに関する研究を行っているところがほとんどですが、その他の研究テーマとして、アストロバイオロジー(注4)、生物やスポーツ分野に関わる構造力学、生体内部流れなどについても扱っていたり、メインの研究テーマが渋滞学の研究室もあったりして、思ったより色々な研究ができるようです!
いかがでしたか。この記事が航空宇宙工学科に興味を持つきっかけとなれば嬉しいです。航空宇宙工学科では、例年五月祭で展示や体験企画、模擬店など色々な企画を行っているので、もっとくわしく知りたいと思った方は、ぜひ五月祭にも足を運んでみてください! ありがとうございました!
(注1)航空機を正面・側面・真上の三方向から見た外観図のことです。
(注2)一般に、寸法や重量など、機械の性能や形状を構成する要素のことをいい、ここでは、航空機の機体重量や巡航時のマッハ数、巡航高度などを指します。
(注3)航空機は様々な力を受けたり発生させたりして空を飛んでいます。このうち、機体の進行方向に垂直な向きの力を揚力と呼びます。揚力は航空機が空に浮上するために必要な力ですが、この揚力を無次元化したものが揚力係数です。
(注4)アストロバイオロジーとは、日本語では宇宙生物学という意味で、アメリカのNASAが「宇宙における生命の起源、進化、伝搬および未来」を研究する学問として提唱しました。