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英語で講義!英語でプレゼン!工学部海外派遣プログラムinオーストラリア

こんにちは! この春から精密工学科3年の小林です。

私は、2/15~3/14に行われた、工学部主催の海外派遣プログラムに参加してきました。今回はその様子をお伝えします。

プログラムは、オーストラリアの首都キャンベラにある、オーストラリア国立大学にて行われました。 私たちは工学部・コンピュータサイエンス学部の授業を受けつつ、様々な施設(植物園や動物園、宇宙通信施設や国立博物館など)や イベント(大学内のパーティや、地元でのフェスティバルなど)を訪れました。

動物園にいたコアラ(眠っているようでした)

今回は少し真面目に、そのプログラムの中でも最も印象に残った、「システムエンジニアリング」の授業について書こうと思います。 この授業は全3回構成です。

まず第1回では、現地の学生と共に、システムエンジニアリングとは何か、というテーマの講義を受けました。 授業はもちろん、英語で行われました。 それでいて専門的な内容なので、集中して聞かないと理解できません。 手元でメモを取ったり、スライドの絵から内容を推測したりして、なんとか内容を理解しようと努めました。

では、具体例とともに、内容を説明してみようと思います。 かつては、一つの分野の工学を突き詰めることによって製品の性能を向上させることができ、社会のニーズを満足させることができていました。 例えば、とにかく速く燃費が良い車を作るために、機械工学の研究を突き詰めて進めていた、ということです。 しかし、現代では製品の性能を単純に向上させることが難しくなり、しかも向上させたとしてもそれだけでは社会のニーズを満足させられなくなってきています。 さらに、別の分野とのコラボレーションを考えることが重要になってきています。 車の例で言えば、燃費の向上が難しくなり、しかも燃費が良いだけでは人々を満足させられなくなってきています。 また、カーナビシステムの普及により情報工学とのコラボレーションが重要になったり、環境問題が議論されるようになってきたため、環境工学とのコラボレーションも必要になったりしてきました。 さらに最近では自動運転の技術開発がされるようになったため、AI技術や法学などとのコラボレーションも必要になってきています。

つまり、少し難しい言葉でまとめると、 今の人類が抱える問題は学際的かつ相互依存的であり、工学の一分野を極めたとしても、その分野はより多くの分野が関わって形成されている「システム」の一部分に過ぎないことになります。 よって、各種の原理や能力を統合して問題解決にあたっていかなければいけません。 各種工学分野はもちろん、法学や経済学、心理学といった多種多様な分野をつなぎ合わせなければ、現代の人類が抱える問題は解決することが難しいのです。 システム全体を見て、各種の分野を統合して全体を調和させて問題解決をすることがシステムエンジニアリングです。

以上が第1回の授業の内容です。 学際的な研究や多分野コラボレーションというものが好きな私にとって、とても興味をそそられる話でした。

第2回はこの海外派遣プログラム参加者のみの授業でした。 グループごとに与えられた課題に対してシステムエンジニアリング的な手法を使い、解決策を考えるワークショップを行いました。 授業後もグループで集まって議論し、次の授業で行うプレゼンテーションに備えました。

私のグループの課題は、ロボットアームを利用して効率的に製品を塗装するシステムを設計するというものでした。 グループで話し合い、次のようなシステムにすることを決めました。

  • 塗装する製品の表面をスキャンして、3Dデータとしてコンピュータに取り込む
  • そのデータを利用して、最適なロボットアームの動かし方を決める。
  • ロボットアームに大小2種類のスプレーを持たせ、塗装を効率的に行う

精密工学科で3Dスキャンを実際に行う演習をしたことのある私が、その経験を活かして製品の3Dスキャンについて考えました。 また、電気電子工学科のメンバーは電気を利用するパウダーコーティングについて考え、計数工学科のメンバーは速く正確に塗装するためのアルゴリズムを考えました。 そして、他の人は議論をまとめたりスライドや原稿を作成したりするという、綺麗な役割分担をすることができました。 各人の知識や能力を存分に活用しつつ、それらを統合して解決策を考えるというとてもシステムエンジニアリング的な問題解決法でグループワークができたと思います。

第3回のプレゼンテーションも、英語で行いました。 当然、日本語での発表よりも緊張しました。 しかし、滞在期間中に英語を聞いたり話したりする経験を積んでいたこともあり、本番は意外にも堂々と話すことができました。

以上、システムエンジニアリングの授業についてお話ししてきましたが、いかがでしたか。 授業以外にも、1ヶ月間非常に貴重な体験をさせてもらいました。興味が湧いた人は、次回のプログラムにぜひ応募してみてください。 最後まで読んでいただきありがとうございました。