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五月祭展示に行ってきました!2017(3)~応物系展示

こんにちは!マテリアル工学科3年の松浦と、同じく4年の中村です!

僕たちは五月祭の工学部学科展示の1つ、「工学博覧会」に行ってきました^^

工学博覧会は、「応物系」と言われる工学部の物理工学科と計数工学科合同の企画です。どちらも、普段の講義で学んでいる理論を活かした内容となっており、各展示ブースには背景となる理論を丁寧に説明した資料が置かれていました。

 

2学科合同の展示ということでかなりの数のブースがありました。まず、物理工学科による演示実験を紹介します。

物理工学科


 まず初めに、物理工学科の方が行う演示実験を見学させて頂きました。

・演示実験-光と化学反応:ポリアニリンのエレクトロクロミズム

  ガラスを電極として低濃度のアニリンを含む塩酸に電気を流すと、アニリンの電気化学的酸化によってポリアニリンが合成されます。ポリアニリンは酸化還元状態によって色が変化する性質を持つので、電池の正極と繋ぐと塩酸に浸した金属板が緑青色になり、負極に繋ぐと金属板が黄色になります。

 

   化学式を用いてどういった変化が起きているのかを説明しています。



  ・チタンホイル表面の酸化チタンの薄膜

   コーラの中でチタンホイルに電圧をかけると、チタンホイルの表面に青紫色の非常に薄い酸化チタンの膜が生成されます。これはシャボン玉と同様に光の干渉によるものであり、膜の色は原子によって決まります。



   実験の溶液としてコーラを注ぎます…なかなか見られない光景です。

   電圧をかけてしばらくすると、最初は銀白色だったチタンホイルが、うっすらと青紫色になっています。

 変化が目で見てわかりやすい実験とあって、子どもの来場者さんも含めたくさんの方々が様子を見守っていました。

 

 次に、電磁気の理論を活かしたこちらのブース。



 まずこちらの展示。右側の装置に音楽プレーヤーを繋ぐと...なんと、音楽プレーヤーと直接繋がっていない左側のスピーカーから音が流れてきました。

 皆さんはラジオは聞きますか?こちらのブースでは、ラジオと同様の原理を用いて音の信号を光で伝達していました。「変調」という作業を行うことで、音の信号を光で伝えることができます。こちらの展示では光の振幅を変化させて音の信号を載せるAM変調を行っています。「AMラジオ」のAMはこのAM変調から来ています。

 

 次にこちら。金箔の裏から光っている懐中電灯を当てます。すると...



 なんと、青く光っています。

 もともと金は、赤色~黄色の光を反射して青色の光は透過します。普段見かけるような厚みのある固体は反射光が見えており金色に見えていますが、このように薄い膜にすると透過光が観察できます。透過光の色は、金属によって異なることが知られています。

 

 他にも、光の干渉やプラズマを利用した様々な展示がありました。

 

計数工学科


さて次に、計数工学科の展示です!こちらはコンピュータを利用した数多くの展示がありました。初めに入ったブースがこちら。

・エアギター体験

 

 エアギターを弾く体験をすることができます。Microsoftの開発した人の動きを認識できるデバイスKinectを使って、人やギターなどの3Dモデルを動かしたりギターの音を出したりしています。これにも計数工学科で普段学んでいる理論がそのまま応用されているそうです。

 

 続いては、こちらのブース。

 

・Sound Spring

 マイクに向かって音を鳴らすとその音に応じてスクリーン上にボールが飛び出します。音の高さ・大きさによって、それぞれボールの色・飛び出す勢いが変化します。これには音を周波数で分解するフーリエ変換が使われており、得られた音の情報をボールの色や勢いに反映させています。



・曲当てクイズ

 複数の有名な楽曲がミックスされた音源を聞き、個々の楽曲を聞き分けられるかどうか挑戦できる展示です。



 沢山の人がそれぞれに雑談している中でも、自分が興味のある人の会話や自分の名前などは自然と耳に入ってくることがあります。このように音が選択的に聞こえる現象を「カクテルパーティー効果」と呼びます。この展示は「独立成分分析」という統計的な手法を用いることで、このカクテルパーティー効果をコンピューター上で再現したものです。この手法を用いると、複数の音がミックスされた混合音源から本来の音源を分離・復元することができます。

 

最後に入ったブースでは、皆さんが普段使う乗換案内アプリとも縁が深い作品が紹介されていました。

その名も「MAY SEARCH」。なんと、五月祭の複数の企画を回る際の最短経路を導いてくれるそうです。



まず、企画の場所の情報をグラフ構造に入れ、ダイクストラ法(最短経路算出方法の1つ)などを用いて任意の2点間の最短経路を求めておきます。その結果を動的計画法などで並べ替えて、複数の企画を回る最短経路を求めているそうです。まさに講義で学んでいる内容をフルに活かした作品ですね。製作した方々によると、ゴールデンウィークはほぼMAY SEARCHの製作に費やしたそうです…!

 

本記事では紹介しきれませんでしたが、他にも、カメラからの情報をもとに板の上に乗ったボールが落ちないように板を動かす展示や、手書きの数式で入力できる電卓など、様々な展示がありました。!

講義で学んだ理論がしっかり応用に活かされていて、どれも非常に中身の濃い展示ばかりでした。子どもから大人まで、また工学部で学ぶ僕らも、楽しみ、深く学ぶことができる企画でした!

こちらの企画の公式Webサイトには、「家でも楽しめる工学博覧会」をモットーに様々なコンテンツが用意されているそうです^^ 工学博覧会のWebサイトはこちら

取材に協力してくださった物理工学科・計数工学科の皆様、素敵な企画をありがとうございました!

 

物理工学科のWebサイトはこちら

計数工学科のWebサイトはこちら