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「リーディング大学院」ってどんなとこ?(7) ~ALPS編~

こんにちは!新領域創成科学研究科修士2年の逢澤正憲です.

工学系が関わる「リーディング大学院」特集も第7回目,ついに2014年度連載の最終回となります.博士進学ってどんな感じなのかイメージする手助けになれればと思います.
今回は,光関係の研究にかかわる人々のために開設されているフォトン・リーディング大学院ALPS(Advanced Leading Graduate Course for Photon Science)について取材しました.取材に物理工学科博士課程3年香取研 山中一宏さんに協力していただきました.山中さんは世界で1番精密な原子時計を作る研究をなさっています.現在の時計は100万年に1秒ずれるものが最良だそうですが,目標は100億年(だいたい宇宙の年齢)に1秒ずれる時計だそうです.大変興味深かったので多く語りたいところですが,脇道それずに本題に入ります.

フォトン・リーディング大学院ALPS


ALPS

ALPSについて:
ALPSとは,フォトンサイエンスという分野でつながる理学系・工学系の人々が分野を超えて連携しながら産・学・官でリーダたり得る人材を育成するプログラムです.出身学部としては,理学部物理学科・化学科,工学部物理工学科が多くを占めます.光はどんな分野にも何かしらの形でかかわっているので,幅広い分野の人々が参加しています.

ALPSの教育プログラムについて:
ALPSには必修科目があり,修士・博士でそれぞれ独特な教育プログラムを履修します.他のリーディング大学院もそうかもしれませんが,ALPSは卒業後必ずしもアカデミックの道へ進むことを推奨しているわけではなく,就職して社会にでる道も多くあるようです.そこで,企業の方々を招くような大学外の世界と接する教育プログラムが用意されています.

1,CORALについて
修士での必修科目となるCORAL(Consortium on Education and Research on Advanced Laser Science)では主に企業で光に関する研究職に就いている方々がオムニバス形式で講義をし,それに関係する実験実習を行います.例えば,光ファイバーの研究職の方やLEDの開発者の方などの話を聞いたり,レーザー加工機を実際に動かす実験などを行います.ALPSに参加する学生は比較的企業の方々と接する機会が少ない学科出身の方が多いため,学外へ視野を広げるという点で大変有意義な機会となっているようです.また,実験グループ内で他学科の方と交流ができ研究紹介をしあったりもするそうです.具体的な講義内容はCORALのHPに紹介されています.今回取材した山中さんも,授業への参加やTAとして実験の準備・手伝いを通して企業では実際どのように物事を進めているかの雰囲気を感じられたことが卒業後の進路に少なからず影響したそうです.

↓CORALの授業の様子
H25CORAL三菱電機
三菱電機株式会社における学外実習
H26CORAL08シグマ光機
シグマ光機株式会社の方による光学素子・機器の取扱い実習

2,海外派遣・インターンについて
ALPSでは修了要件として,2~3か月程度の海外での共同研究や2週間程度の海外の研究室訪問といった海外派遣,海外インターン,国内他研究室での共同研究のうちいずれかに参加する義務があります.行き先は自由に自分で探しアポイントを取るそうですが,旅費を支給してもらえます.山中さんの場合,自身の研究に関連する研究室を訪問し実験装置を見学したり,ディスカッションをしてきたそうです.論文を読むだけでは実験装置の全容をイメージできないので,実際に自分の目で見ることは大変有意義な体験といえます.報告レポートがALPSのHPに掲載されているので,興味がある方はアクセスしてみてください.

3,その他のプログラム
他に学生自身で企画するALPS学生間の交流会が行われています.これは,各々の研究をポスター発表しあったり,自分たちで探してきた企業・官僚を招き講演会をしていただくといった催しです.授業においても,博士課程を対象とした海外の企業の方が受け持っている集中講義で新製品の開発過程を学ぶ,さながら企業のインターンシップ的なワークショップなども執り行われ,企業での物事の進め方を感じ取る場が多く用意されているようです.

終わりに:
リーディング大学院・博士進学といっても,必ずしもアカデミック一色とは限らないというのが個人的には1番の驚きでした.せっかくなので,山中さんに博士課程に進学する意義について聞いてみたところ,研究に一区切りをちゃんとつけられることだそうです.分野によると思いますが,修士課程だけではテーマの立ち上げから論文投稿までというすべてのプロセスを通して研究をやりぬくには時間的に厳しい面がある中,博士でしっかりと研究の区切りをつけてから社会にでるというのも一つの道かもしれませんね.

IMGP1352

今回取材に協力いただいた山中さん 後ろには現在の秒の定義(であるセシウム原子時計)よりも正確に時を刻む時計が!香取研には世界で1番精密といってよい原子時計もあるそうです.興味がある方は是非HPを見てみてください.

(文責 逢澤)