前回では、プログラムの概要とフランスの高等教育機関について紹介しました。

今回は私の留学内容について紹介したいと思います。

訪問記

1.語学学校

最初の5か月は、多くの人がフランス語未修でプログラムに参加するので、語学学校での研修に充てられます。

例年、フランス中部のVichyにあるCavilamで行われており、コツコツとフランス語に励みます。

 

この間、フランス人の家庭にホームステイをして生活をすることになります。

私の場合は定年後の老夫妻がホストでした。しばしば、町内会のようなイベントなどにも連れて行ってもらいました。

下の写真は偶然、地方紙の記事に取り上げられたものです。私とホストファミリーの2人も映っています。

 Vichyの人たちの「隣人パーティー」に参加した時の様子(2015年5月30日付La Montagne Vichy版)

Vichyの人たちの「隣人パーティー」に参加した時の様子(2015年5月30日付La Montagne Vichy版)

 

2.ポンゼショセでの学生生活

 

・所属した学科

経済学を学びたいというのがこのプログラムに参加した動機だったので、私は6つある学科のうち、「経済・経営・金融学科」の経済コースを選びました。

東大での専攻は交通工学ですが、もう一つの専攻として経済学を選びました。

学部時代と他の学問分野を選べるというのはこの留学のメリットの一つです。

基本的には、希望した学科に行かせてもらえますが、この学科と応用数学の学科に関しては数学的素養が必要だと、プログラム応募時に念を押されることになります。

 

教えられる内容は、この学校全体に言えますが、国家官吏としてどう行動するか、といった視点が前提になっているように感じられます。

この学科出身のノーベル経済学受賞者ティロール氏の「規制の経済学」で示されているような、公的制度レベルで問題を解決しようという意識は、この学校で育まれたのだなと思わせるカリキュラムです。

 

私たち留学生は、フランス人にとっては高校を卒業して4年目に当たる学年に編入することになります。

彼らとともに、まったく同じ2年間のカリキュラムを終えることを目指します。

 

ちなみに、私の学科の学生数は52人で、留学生は私を含めて3人(イタリア人とスペイン人)でした。

ポンゼショセ全体の留学生比率は40%ほどなので、他のポンゼショセの学科と比べると極端に留学生が少ない学科です。

 

・時間割

東大を始め、日本の理系の修士課程は、研究室生活がメインでしょうが、グランゼコール課程では講義を受けて単位を取得することがメインです。ということで、入学1年目の私の時間割を紹介したいと思います。

1回の講義は約3時間で、途中頃合いを見て15分の休憩が取られます。

1学期(9月から1月)

1限

8:30-11:15

2限

11:30-13:00

3限

13:45-16:30

4限

16:45-19:30

産業セミナー フランス語 環境経済学
ゲーム理論 スポーツ フランス語(90分)
コーポレートファイナンス マクロ経済学
計量経済学 英語
フランス語(90分) 統計学

基礎レベルの経済学から始まるので、ある程度の基礎を勉強していれば最初のうちはついていけますが、やはり3時間の講義は濃密で、学期後半になるにつれ雪だるま式に大変になっていきます。

また、フランスでは高校卒業後の2年間で、ひたすら数学の素養を高めるカリキュラムとなっているようで、数学的な表現の多さに苦労しました。

語学の単位も必修となっており、フランス人が英語と第2外国語を学習するのと同様に、私たち留学生も英語とフランス語の講義を取ることになります。

2学期(2月から5月)

1限

8:30-11:15

2限

11:30-13:00

3限

13:45-16:30

4限

16:45-19:30

産業組織論 フランス語 都市経済学 開発経済学
公共経済学 スポーツ
交通経済学
保険数理 フランス語(90分)
タンデム 基礎法学 都市論

2学期は、内容的にも課題的にも、より応用レベルだと感じました。どの講義でも、論文を読んで皆の前でレビューする回が設けられ、数学の素養が必要、というのはこの際にも感じました。

私の学科では比較的少ない方ですが、ポンゼショセでの課題は特にグループワークが大きな割合を占めます。

学校内のカフェや図書館の会議室などで、多国籍の学生グループがディスカッションをしている光景が、ポンゼショセの日常です。

・カフェブレイクと食堂

フランス人の憩いの場といえば、カフェでしょう。

休み時間のたびに学生たちも教授たちも、ホールにあるカフェに長蛇の列を作ります。エスプレッソやカフェ・オ・レを飲みながら談笑し、リラックスする姿はみなさんのイメージ通りかもしれません。

クロワッサンやパン・オ・ショコラを朝食やおやつとして注文している人もとても多いです。

カフェの様子

カフェの様子

 

昼食は、みな食堂で食べるようです。というのも、学生にはフランス政府から毎日300円ほどの昼食補助金が出ており、食堂で食べると自動的にその分だけ割引されるからです。

牛・豚・羊・鶏・鴨・兎といった様々な肉料理、キッシュやオムレツといったフランス的な料理、ピザやパスタといったイタリアンなどの4-5種類ほどの日替わりメニューを200円台で食べることができるので、財布に優しいです。

フランスらしくデザートも充実していますし、ボジョレーヌーヴォーの解禁日には小さなワイン瓶が売ってあり、昼間から飲んでいる人もいます(笑)

 

昼食の写真(ローストビーフと野菜の付け合わせ)

昼食の写真(ローストビーフと野菜の付け合わせ)

・余暇とバカンスの過ごし方

19時半まで講義がある日もあり、なかなか学業以外できない日も多いですが、2か月に1回、1週間の長期休み、いわゆるバカンスが設定されているのがフランス流です。

鉄道・LCC・長距離バスといった安く移動できる手段が数多くあり、シェンゲン圏であれば出入国審査がないですし、通貨もユーロである国が多いので、国境を越えていても、本当に国内旅行の感覚で観光できるのは、ヨーロッパ留学の醍醐味といえるでしょう。

プログラムを振り返って

 

私は「フランスだから」という理由で留学先を選んだわけではないので、「なぜフランスか?」と聞かれると困る部分もあるのですが、その答えは大きく2つに分けることができると思います。

1つに、修士号を取れる、フランスが留学生に金銭面で優しい、第二外国語としてのフランス語を習得できるといった、実利的な面です。

2つ目は、フランスという国自体の魅力の面です。彼らが追い求める理想と、噴出しているさまざまな矛盾。自由・平等・博愛を国是とするこの国で、社会の諸制度はどのような思考様式で構築されているのか、各個人はどのような行動原理を持っているのかを見つめると、その両者がうまく調和している面と軋轢を生んでいる面に気づかされます。それらを内部から見つめることができたことは、日本的な考え方しか知らなかった私に、良い意味でとても大きな影響を与えたと感じています。

大きな話になってしまいますが、学生である時期に長期留学する最大のメリットは、自らの考え方を全く異なる考え方から見つめ直し、変えることのできる余地があるという点なのではないでしょうか。

留学でどう変えられるのか?それはぜひご自分で留学して、感じてみてください!

(執筆:黒川大地)