こんにちは、社会基盤学専攻、修士2年の黒川大地です。

2015年の4月からフランスに滞在しています。2年間の教育プログラムも残すところあと少しとなったので、体験記を書きたいと思います。

工学系研究科の社会基盤学専攻とマテリアル工学専攻では、東大の学位と協定校であるポンゼショセの学位を同時に取得できる、いわゆる「ダブル・ディグリー」プログラムが提供されています。

フランスでの経験を2つの記事に分けて紹介したいと思います。第一弾として、教育プログラムの概要と留学先の特徴について紹介します。

Program File #5

  • アクティビティタグ
    長期 | 海外, 大学院 | 学位取得
  • 参加プログラムの内容
    フランスのグランゼコール、エコール・デ・ポンゼショセ(国立土木学校)での修士課程留学
  • 主催事業
    二校間協定
  • 訪問先
    フランス パリ、エコール・デ・ポンゼショセ(国立土木学校)
    フランス、パリ東部のシャン・シュル・マルヌ市にある、トップレベルの理系グランゼコール。フランスの産官学に強い影響力を持つ
  • 訪問期間
    2015年4月‐2017年3月
  • 参加者
    黒川他3名(2015年度)

1.概要

学部4年の時に応募し、東大の大学院に入学と同時にフランスに渡り、2年間を過ごすというプログラムです。最初の5か月を語学学校、残りをエコール・デ・ポンゼショセ(国立土木学校)で過ごすというのが標準的な形となります。講義はすべてフランス語で行われますが、このプログラムではフランス語ができることが応募要件になく、フランス国内の語学学校でゼロから始めることができます。

留学先では、以下の6つの学科が提供している正規課程の中から選ぶことができるので、学習できる分野は広範です。

応用数学・コンピューターサイエンス学科 (IMI)

経済・経営・金融学科 (SEGF)

土木工学・建設工学科 (GCC)

都市・環境・交通学科 (VET)

機械工学・マテリアル工学科 (GMM)

産業工学科 (GI)

フランス人や他のダブル・ディグリー留学生と同様の単位を取得することで、東大の修士課程修了と同時に、修士号に相当する“diplôme d’ingénieur”が授与されます。

日本・フランスの合計3年間で、日本では平均2年を要する修士号を2つ取ることができるというのが、このプログラムのメリットです。

2.エコール・デ・ポンゼショセについて

・グランゼコールとは?

フランスには「大学受験」がありません!そうなると、誰もが権威のある大学に入りたがると思われるかもしれませんが、入試難易度の高い、いわゆるエリート校は「大学」ではなく、「グランゼコール」と呼ばれる教育機関なのです。

国立行政学院(エナ)やフランス各地に点在する政治学院(シアンスポ)、HEC、ESSECといった文系グランゼコールと、エコール・ポリテクニークや国立高等鉱山学校(ミン)、国立土木学校(ポンゼショセ)、これも各地にあるエコール・サントラルといった理系グランゼコールが有名です。

中でも、理系グランゼコールは、”Ingénieur“(直訳するとエンジニアですが、グランゼコールの学位の1つです)によってフランスの統治システムが2世紀以上にわたって支えられてきた伝統から、非常に社会的威信の高いものとして認識されています。

・ポンゼショセとは?

エコール・デ・ポンゼショセ(Ecole nationale des ponts et chaussées)は、直訳すると、国立土木学校で、最近はグランゼコール連合のParisTechに加盟している関係でEcole des Ponts ParisTechと呼ばれています。通称はENPC、エコール・デ・ポン、ポンゼショセなど様々ありますが、以下では一般的なポンゼショセと書くことにします。

ポンゼショセは、1747年にルイ15世の王令によって設立された最古のグランゼコールです。当時、公共事業を専門とする国家官吏が必要とされたことから設立され、土木・建築の即戦力人材の養成が目指されました。時代が下るにつれ、関連分野である経済学や管理工学、コンピュータ工学の教育を行うようになり、卒業生の活躍の幅も公務員に留まらず、民間企業の中核を担うような存在となっています。

もともと、パリ中心部のサン・ジェルマン地区に立地していましたが、グランゼコールの郊外移転の流れの中で、パリから東方向に電車で20分ほどの郊外シャン・シュル・マルヌの新校舎に移転しています。

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1997年から使用されている校舎。パリ、サンジェルマン地区からシャン・シュル・マルヌに移転して現在に至る。

 

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校舎周辺の紅葉の様子

 

・ポンゼショセの卒業生

有名な卒業生としては、ナビエやシェジーといった流体力学者、ベクレル、フレネル、ゲイ=リュサックといった物理学者、コーシー、コリオリといった数学者や、最近では2014年にノーベル経済学賞を受賞したティロールなどがいます。

上記は研究者ですが、産業界で活躍する人の方が多く、さまざまな企業で高い役職に就いているようです。中でも、ポリテクニークに入学し、最終学年をポンゼショセで履修した学生である通称“X-Ponts”は、フランス社会で最高のエリートルートの一つとされており、エナの卒業生“Enarque”、ポリテクニークとミンの卒業生“X-Mines”と合わせて、社長職の多くの割合を独占していると言われています。

以上、みなさんになじみの薄いであろうフランスの教育機関についての紹介が長くなりましたが、次回は私自身の留学生活を紹介したいと思います!

 

(執筆:黒川大地)