こんにちは、化学生命工学科4年の森です。五月祭展示に行ってきました!シリーズ第2弾は、都市工学科学術展示「東京とオリンピックと都市計画」の模様をお伝えいたします。

都市工学科では、人々が安全で快適に暮らすことのできる都市をつくるため、都市問題及び環境問題の解明とその対処を目指した工学的技術や実践的な方策についての研究が行われています。今年の都市工学科による学術展示のテーマは、今世間を賑わせている「東京オリンピック」。オリンピックをめぐる東京の都市計画について、1964年、1940年、2020年の3つの年にフォーカスした展示がされていました。

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まずは1964年、言わずと知れた東京オリンピック開催の年です。終戦から19年がたち、戦災からの復興と先進国への復帰を世界に向けてアピールする絶好のチャンスと、東京では様々な計画が急速に進められました。例えば、首都高速道路の建設や東海道新幹線の着工、上下水道の整備など。メインスタジアムとなった国立競技場は神宮外苑陸上競技場を解体して、その跡地に建設されたもので、改築を経て75000人を収容できる国内屈指の競技場となりました。全体会場計画を担当した高山英華先生、代々木体育館などを設計した丹下健三先生は1962年に創設された都市工学科の初代教授です。「1964年の大会はそれまでの空間の質を重視する都市計画からスピード・物量を重視する都市計画へと転換するきっかけとなった」とポスターでは述べられていました。

1940年とオリンピックと聞いてピンとこない方もいるかもしれません。実は1964年よりも前に東京はオリンピック開催権を手にした過去があるのです。その開催予定が、皇紀2600年にあたる1940年でした。当時立てられた会場計画や市庁舎移転計画、同年に開催される予定だった東京万博計画などが紹介されていましたが、その後戦争の激化により東京はオリンピック開催権を返上することとなり、これら計画が実現することはありませんでした。実施に移された計画としては東京緑地計画があり、これは日本で初めて、そして唯一実行された都市圏スケールの緑地計画で、この一部(石神井川緑道、城北中央公園など)は現在も市民の憩いの場や良質な郊外住宅地として残っています。

そして2020年、東京は56年ぶり2回目の五輪を迎えます。展示では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは大会そのものが目的となっており「都市計画」の議論が十分になされていないことへの懸念が示されていました。第1回東京オリンピックとは違い、今回の会場計画には都市計画のプロフェッショナルである都市工学科都市計画コースの教授たちが関与していないそうです。
都市の構造・方向性を変革する力をもつオリンピック。これを機に東京という都市圏をどのようにしていきたいのかという長期的なビジョンの持たなくてはなりません。ポスターに書かれた「先を見通す余裕さえなく必死で自転車のペダルを回すように焼畑式都市開発を進めてしまってよいのだろうか。」という一文が非常に印象的でした。

教室中央部には、国立競技場が建設されている明治神宮外苑とその周辺地域の模型が置かれていました。細かく建物が密集した部分や、国立競技場の曲線部分が大変だったとのこと。スタジアムのスケール感がよくわかります。
スポーツの聖地として活躍してきた神宮外苑ですが、造営当初は美しい西洋的都市緑地であり、オリンピックという大規模な大会への土地利用は想定されていませんでした。1964年オリンピックのため国立競技場や首都高速道路が建設された際に多くの木々が伐採され、2020年のオリンピックではさらに緑地を削って巨大な競技場を作る計画となっています。模型を通して、歴史的価値のある風致が損なわれていく一方であるという現実を学ぶことができました。

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ちなみに、模型には「スタイロフォーム」という素材が使われているそうです。軽くて丈夫、そしてカッター等で容易に加工できるという特徴から採用されているとのことでした。

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ふと教室の隅をみるとなにやらおしゃれな空間が。なんと展示スペースにBarが併設されていました!!

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メニューを見てみると、……ん?ル・コルビジェ…?木密…??
「都市工でよく使われる用語をイメージして作ったドリンクを提供しています!」とスタッフの方が嬉しそうに説明して下さいました。
「木密」とは「木造住宅密集地域」の略で、地震・火災において大きな被害が出る可能性が高い危険な地域として、都市計画ではその整備が課題となっているそうです。ちなみに「木密」という名前で提供されているドリンクの正体は、シナモンと金箔(!)をトッピングしたココアでした!名前の危うさに反して、とっても美味しそう!
ドリンクを飲みながら模型を眺め、都市空間について思いを馳せる…なんとも粋な五月祭の楽しみ方ですね。価格設定も良心的なのが嬉しいです。

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エントランスには卒業制作と、3年生が演習で作った集合住宅の模型が展示されていました。細かい部分まで作りこまれており、目線を落として眺めてみると、まるでその道に立っているような気分に。都市工学科は実地調査や模型作りといった演習の授業が充実しているのが特徴で、これらの土地利用を考察する作業を通して実践的な力を培っていくそうです。

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最後に、その建物で何が行われるかを考えるだけではなく、その建物が周辺の地域、そして人々にどんな影響を与えるかといった全体的機構を考慮し、都市問題・環境問題の解決に繋げていくのが都市工学だとスタッフの方が話して下さいました。

今まで自分に身近なこととして「都市計画」をとらえられていませんでしたが、都市という複雑系の構成要素である私たち市民が無関心でいてはいけないと強く考えせさせられた学術展示でした。五月祭の賑わいから少し離れ、落ち着いた空間で素敵な一時を過ごすことができ、とても楽しかったです。
取材に協力してくださった都市工学科の皆様、ありがとうございました!
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(執筆:森 千夏)